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「論理学者の三人の子供」の難しさ、問題解決のアプローチ

論理学者の三人の子供、という問題がある。

この問題は結構有名で、難易度が高いと言われている。

今回この問題がなぜ難しいのか?を考え、この問題の解決に至るアプローチについて掘り下げてみた。

なお、あくまで私の考えであり、問題の本質とは違うかもしれないことを言及しておきます。

本内容は性質上、問題の答え、答えに至る経緯を書いていますので、知らない人にとってはネタバレになります!!自己判断で読んでください!

 

目次

1.問題の概要

2.解き方

3.この問題の特徴、三つ目のヒント

4.まとめ

 

1.問題の概要

問題の内容はこんな感じだ。

「かつて級友であった二人の論理学者が、久しぶりに再会した。

これまで連絡を取り合えていなかっただけに、お互いに近況について談話に花が咲く。ふと子供の話になり、「私には三人の子供がいるのだが、それぞれの子の年齢を当ててみてくれ」と一方の論理学者が提案。それに応じたもう一方の論理学者は以下の3つのヒントを頼りに、すぐに子供の年齢を言い当てたという。

ヒント1:

まず初めに、私の子供たちの年齢を全てかけると、積は36になる。

ヒント2:

次に、子供たちの年齢を全て足すと、和は私たちが大学で一緒に暮らしたアパートの部屋番号と同じだ。

ヒント3:

最後に、一番年上の子は赤毛でねぇ

 

これを頼りに、あなたは3人の子供の年齢を言い当てることはできるだろうか」

以上が問題である。

なお、答えはYESである。

 

2.解き方

問題の答えに至るアプローチをわかりやすくするために、手順を分けながら解き方を書いていく。

手順①パターンの具体化

まず一つ目のヒントから、あり得るパターンが提示でき、積が36になる三つの数字の組み合わせは8パターンである。二つ目のヒントも考慮し、それぞれの和も示すと以下のようになる。

1,1,36 = 38

1,2,18 = 21

1,3,12 = 16

1,4,9 = 14

1,6,6 = 13

2,2,9 =13

2,3,6 = 11

3,3,4 = 10

 

手順②パターンの絞り込み(なぜ「その時」答えの出なかったか)

さて、ここで引っ掛かってくるのは「二つ目のヒントの論理学者同士だけが知っている【部屋番号】を我々が知らないこと」だ。だから手順①で8パターンまで絞り込んでも、それ以上の絞り込みが難しい。

ここで大きなヒントになるのはこの一文だと思う。

「それに応じたもう一方の論理学者は以下の3つのヒントを頼りに、すぐに子供の年齢を言い当てたという」

この「すぐに」がポイントだと、私は思う。質問された論理学者は三つ目のヒントが提示されて「すぐに」に答えに至った。つまり逆に言えば、二つ目のヒントまでで答えが出るのであれば、出題者が三つのヒントを言う前に子供の年齢を言い当てたはずだ。

これから、数字の和が複数あるパターンが答えにあたると考えられる。よって以下のどちらかだ。

1,6,6 = 13

2,2,9 =13

 

手順③パターンの絞り込み(一番上の子の特徴を言う理由)

あとは簡単で、一番上の子の特徴を言うことは、「一番上の子は一人しかいない」ということなので、2,2,9で答えが出てくる。ただし、正直この部分は日本語には向いておらず、おそらくこの問題の原文は英語で「一番上の子(単数形)」だからわかるのであって、複数形を時に単数形で話すこともある日本語では「一番上の子(達)は赤毛」と言った可能性が捨てられなくなる。ただ、論理学者はそういった曖昧な表現をしないと仮定するのであれば、日本語でも答えが定まる(仮定の中で定まっているので、定まってないじゃんってツッコミには負ける)。

 

3.この問題の特徴、三つ目のヒント

さて、日本語の問題はさておいて、この問題の特徴は二つあると思う。

特徴①ヒント2で具体的な数字を言わないこと

特徴②ヒントを言われた理由を考える必要があること

3.1特徴①

もしこの問題のヒント2が、「子供たちの年齢を全て足すと、その和は13だ」だった場合、多くの人が簡単に答えに至れると思う。ヒント1、ヒント2、ヒント3と順番に考えるだけで「8パターン→2パターン→1パターン」と答えの絞り込みができるからだ。問題を具体的な数字に落とし込む手順さえできれば誰でも答えに至れる。しかし、この問題はそうではない。「8(7)パターンの内、いったいどれが【部屋番号】なんだろう?」となる。この問題の特徴は、具体的な数字を与えないことで、「ヒント2では絞り込めない」という幻影を作ったことだ。

ここで効いてるのが、ヒント3の存在だ。ヒント3の存在によってヒント2は8パターンを2パターンに絞り込み可能な情報に活用できる。

 

3.2特徴②

三つ目のヒントで「赤毛とか言われてもなぁ」となってしまうとこの問題から抜け出すのが難しくなってしまう。人によっては「赤毛」が何かの隠語だと考えだしてしまうかもしれない。ヒントの理由を考えても、「なぜわざわざ赤毛なんてことを言う必要があったか?」という「ヒントの内容」の理由を考え出すと、ドツボにはまってしまうだろう。

ここで必要な考え方は「ヒントを言われた理由、ヒントがある理由を考えること」である。内容の理由ではなく、存在の理由である。

特に今回、論理学者がすぐに答えに至ったことから、三つ目のヒントがないと解けない、つまり「二つ目までのヒントでは絶対に答えがでない」ということを言及するために三つ目のヒントがあるのである。「すぐに」から「順序」が出てくるのである。思考の順番的にはヒント1→ヒント2→ヒント3→ヒント2→ヒント3、という一旦戻る形になる。

 

4.まとめ

この問題の面白さは、ヒント3の「存在」からヒント2で答えを絞り込めるようにするという点だ。

人は一旦考えて、答えが出ないという結論を出してしまうと「答えが出ないのが答え」という状態で固定化してしまうと思う。あとは追加のヒント(今回でいうヒント3)の新しい情報がどうにかしてくれるだろうと考えてしまいがちだと思う。そこで来る言葉が「赤毛です」だ。「あ、そう...それだけ?」となる。この肩透かし感もこの問題の魅力かもしれない。

「ヒントの存在」を考えることは、様々なところで有効だと思う。余剰情報でミスリードをさせるタイプの問題には不要に思われるかもしれないが、出題者の意図を探り、ミスリードさせたい方向を認知することで答えに近づくパターンもある。他の問題でも行き詰ったら使ってみるといいかもしれない。

なお、現実の問題は、情報がそもそも足りていないこともあるし、過剰にあって精査が困難なこともある。ひどい場合はそもそも答えがない、どころか悲劇的な答えのみある、なんてこともあると思う。問題解決の練習として、アプローチの仕方を勉強しても無駄に終わるかもしれない。こういったモチベーション問題への良いアプローチを、この聡明な二人の論理学者は知っていたりしないだろうか...。